注目レース情報

第37回マイルチャンピオンシップ南部杯(JpnⅠ)

盛岡競馬場 ダ 1600メートル2024/10/14(祝月) 12R 18:15発走

レースについて

○歴史

 南部杯の創設は1988年。第1回から第7回まで北関東以北の地区限定競走で実施。水沢1600mを舞台に『北日本マイルチャンピオンシップ南部杯』のレース名で行われたが、1995年、JRA、全国の地方競馬にも門戸を開放。名称も『マイルチャンピオンシップ南部杯』へ変わり、JRA・ライブリマウント、岩手トウケイニセイの対決は“天下分け目の決戦”と言われた。結果はライブリマウントに軍配。翌年3月、第1回ドバイワールドカップへ遠征した。

 1996年、新盛岡競馬場=OROパークの完成に伴い、盛岡ダート1600mへ移行。“砂の女王”ホクトベガが圧勝し、1998年はメイセイオペラが優勝。2001年はアグネスデジタルなど名だたるダート強豪が歴代名馬に名を連ねています。

 また南部杯はリピーターが多いことでも有名。北日本時代も含めるとトウケイニセイ、ユートピア、ブルーコンコルド(3連覇)、エスポワールシチー(2連覇、3度優勝)、ベストウォーリア、コパノリッキー、そして一昨年アルクトスと計7頭が連覇以上を達成している。

昨年優勝馬 レモンポップ

コースの特徴

○ダート1600m

 スタート地点はコース右手奥、2コーナーから伸びる引き込み線の最奥。向こう正面は約800mに及び、途中通過するコーナーはわずか2カ所。枠順による有利・不利は少なく、G1なら16頭立てにもなるがそれでも枠の内・中・外で勝率・連対率の差がほとんど無い。馬の実力がしっかり反映された戦いを期待できるダート1600mはOROパークが誇るチャンピオンコースだ。ただし意外に流れが落ち着きがちで本格的な差し・追込馬には展開が向かない場合も多い点には要注意。先行・好位の決着が多い南部杯のイメージ通りだ。

盛岡競馬場コース図

データ分析

○マイルチャンピオンシップ南部杯=盛岡1600mは逃げ、先行馬が優位

1着 2着 3着
逃げ 1回 4回 0回
先行 7回 5回 4回
差し 2回 1回 6回
追込 0回 0回 0回

 好走脚質で先行1着7回2着5回3着4回と特出しているのは、盛岡1600mのコース形態による。スタートして3コーナーへ入るまで約800mのほぼ直線を走るが、そこでのポジション取りが勝敗の分かれ目。理由は東京ダート1600mの直線は500m以上に対し、盛岡は直線約300m。東京競馬場に比べて約200m短いため、先行した馬が押し切れるケースが多い。直線の上り坂もさほど苦にならないと異口同音に勝利ジョッキーが語っている。

 差し脚質の1着馬は2019年サンライズノヴァ、2018年ルヴァンスレーヴの2頭。サンライズノヴァは出遅れグセがあり、なかなか自分の競馬に持ち込めなかった。南部杯でも出遅れたが、鞍上・吉原寛人騎手が3コーナーでは5番手まで押し上げ、逃げロンドンタウンを1秒以内の射程圏に入れた。ルヴァンスレーヴは3コーナー入り6番手だったが、1番人気ゴールドドリームがその後ろを追走したため。M・デムーロ騎手は相手が前の馬ではなく、ゴールドドリーム1頭のみと考え、そのとおりの結果。1着ルヴァンスレーヴ、2着ゴールドドリームで決まった。

 逃げ切りは昨年のレモンポップ1頭のみだが、過去10年に限定したから。2012年、2013年とエスポワールシチーが逃げ切りを決めている。やはり注目は逃げ、先行タイプ。

○1番人気7勝2着1回3着1回

1着 2着 3着 勝率 連対率 複勝率
1番人気 7回 1回 1回 70% 80% 90%
2番人気 1回 4回 2回 10% 50% 70%
3番人気 0回 0回 1回 0% 0% 10%
4番人気 1回 2回 3回 10% 30% 60%
5番人気 0回 0回 1回 0% 0% 10%
6人気以下 1回 3回 2回

 1番人気の優勝は昨年のレモンポップからカフェファラオ、アルクトス(2度目制覇)、コパノリッキー(2度とも)、ベストウォーリア(2度とも)。勝率70%、連対率80%、複勝率90%と信頼度は非常に高い。過去10年で1番人気で馬券対象から外れたのは2020年のサンライズノヴァだが、それでも4着入線を果たした。

 2番人気の優勝は2018年ルヴァンスレーヴだが、南部杯で史上初めて3歳馬優勝を果たし、続いてチャンピオンズカップも快勝した歴史的強豪。4番人気の優勝は2019年サンライズノヴァ。6番人気の優勝は2020年アルクトスだったが、日本レコードで快走。翌年には堂々1番人気で2連覇を果たした。

 余談だが、1番人気受難の時代もあった。2004年(1着ユートピア)から2010年(1着オーロマイスター)まで7年連続で敗戦。また2006年から2008年まで史上初となる南部杯3連覇の偉業をブルーコンコルドが達成したがすべて2番人気での優勝。いま考えると七不思議だが、2012年以降は1番人気が8回優勝している。

○5歳を頂点に各世代ともまんべんなく優勝

1着 2着 3着
3歳 1回 0回 0回
4歳 1回 1回 1回
5歳 5回 5回 2回
6歳 2回 4回 3回
7歳 1回 0回 3回
8歳 1回 0回 0回
9歳 0回 0回 1回

 5歳馬の優勝は昨年のレモンポップ、カフェファラオ、アルクトス、サンライズノヴァ、ベストウォーリアが優勝。6歳馬はアルクトス、コパノリッキーだが、4歳馬の優勝はベストウォリアー、7歳馬の優勝はコパノリッキー。ダート体系が整備された今年度以降はともかく、これまでダート競馬は息の長い活躍ケースが多く、南部杯も連覇が多いことで定評がある。

○マイルチャンピオンシップ南部杯(1995年~)サイアーライン

2023年 レモンポップ 父レモンドロップキッド ミスプロ系
2022年 カフェファラオ 父アメリカンファラオ ミスプロ系
2021年 アルクトス 父アドマイヤオーラ SS系
2020年 アルクトス 同上
2019年 サンライズノヴァ 父ゴールドアリュール SS系
2018年 ルヴァンスレーヴ 父シンボリクリスエス ロベルト系
2017年 コパノリッキー 父ゴールドアリュール SS系
2016年 コパノリッキー 同上
2015年 ベストウォーリア 父マジェスティックウォリアー APインディ系
2014年 ベストウォーリア 同上
2013年 エスポワールシチー 父ゴールドアリュール SS系
2012年 エスポワールシチー 同上
2010年 オーロマイスター 父ゴールドアリュール SS系
2009年 エスポワールシチー 父ゴールドアリュール SS系
2008年 ブルーコンコルド 父カーリアン ノーザンダンサー系
2007年 ブルーコンコルド 同上
2006年 ブルーコンコルド 同上
2005年 ユートピア 父フォーティナイナー ミスプロ系
2004年 ユートピア 同上
2003年 アドマイヤドン 父ティンバーカントリー ミスプロ系
2002年 トーホウエンペラー 父ブライアンズタイム ロベルト系
2001年 アグネスデジタル 父クラフティプロスペクター ミスプロ系
2000年 ゴールドティアラ 父シーキングザゴールド ミスプロ系
1999年 ニホンピロジュピタ 父オペラハウス ノーザンダンサー系
1998年 メイセイオペラ 父グランドオペラ ノーザンダンサー系
1997年 タイキシャーロック 父ジェイドロバリー ミスプロ系
1996年 ホクトベガ 父ナグルスキー ノーザンダンサー系
1995年 ライブリマウント 父グリーンマウント ノーザンダンサー系

 南部杯がJRA、地方競馬全国交流へ昇格して今年で29回目だが、サイアーラインからも興味深いデータが出てきた。1995年から2008年までノーザンダンサー系、ミスプロ系がほぼ交互に優勝を分け合っていたが、2009年からサンデーサイレンス系が席けん。特にゴールドアリュールの血は強烈で産駒が7度優勝。その後もSS系が牛耳っていたが、久しく鳴りを潜めていたミスプロ系が一昨年、昨年と2年連続で制覇。世界ダート界のすう勢に合わせるかのように、南部杯もミスプロ系が元気を取り戻している。

有力馬紹介

レモンポップ

牡6歳 父レモンドロップキッド

田中博康きゅう舎・美浦

 デビュー2連勝後、約1年の長期休養を余儀なくされたが、4歳10月にオープン入り。重賞初挑戦・武蔵野ステークスはギルテッドミラーの2着に敗れたが、続くGⅢ・根岸ステークスで雪辱を果たし、フェブラリーステークスも完勝。初海外・ドバイゴールデンシャヒーンに遠征したが、10着に敗退。デビューから11戦連続で連対を果たしていたが、ついに途切れた。

 帰国初戦に選んだのが昨マイルチャンピオンシップ南部杯。懸念材料は6ヵ月半ぶりの実戦だったが、3番枠から馬なりで主導権を握り、2着イグナイターに大差をつけて圧勝。2着に2秒差は南部杯史上で最大着差となった。続いてチャンピオンズカップ(中京ダート1800m)でも逃げ切りを決め、JRA最優秀ダートホースに選出された。

 今春は2度目の中東遠征・サウジカップへ挑戦したが、14頭立て12着に大敗。空輸が合わないのか、中東が合わないのか。敗因はレモンポップのみぞ知るだが、帰国初戦、JpnⅠへ昇格したさきたま杯を完勝。この勝利で16戦11勝2着3回。国内では14戦連対パーフェクトを継続した。

 南部杯は連覇が多いことでも定評がある。ベストパフォーマンスとなった盛岡ダート1600mで史上8頭目の2連覇に王手をかけた。

ペプチドナイル

牡6歳 父キングカメハメハ

武英智きゅう舎・栗東

 デビュー2戦は芝を使って8、9着に終わり、3戦目からダートへシフト。いきなり3連勝を飾った。2戦置いて3勝クラスを卒業したが、以降はリステッドレース3勝にとどまった。しかしフェブラリーステークスで11番人気の低評価を覆して快勝。ダートトップが海外遠征中だったことも勝因だったが、それ以前はすべてダート1700m以上での勝利。初のダート1600mで初重賞、初GⅠを制した。前走・かしわ記念はヘリオスの逃げ切りに屈して2番手キープから3着に終わったが、フェブラリーS優勝はフロックではないことを証明。ワンターンの盛岡マイルで巻き返しに転じる。

タガノビューティー

牡7歳 父ヘニーヒューズ

西園正都きゅう舎・栗東

 ダートでデビュー2連勝を飾り、GⅠ・朝日杯FSへ挑戦。未経験の芝だったが、4着に善戦した。続くシンザン記念6着後、ダート路線へ戻って一線級で活躍。昨年3月、コーラルステークス(阪神ダート1400m)快勝後、13戦連続でダート重賞へエントリー。かしわ記念2着2回、武蔵野ステークス3着などの成績を収めている。ただタイトル獲得は一度もなし。追い込みに近い脚質のため届かないレースの連続。昨年の南部杯も4着に終わったが、2着イグナイターとは0秒2差。流れ次第では一気台頭のシーンまで。

サヨノネイチヤ

牡5歳 父ダノンレジェンド

坂井英光きゅう舎・大井(小林)

 3歳4月、大井1400m戦デビュー。1番人気に応えて完勝し、以降も破竹の進撃。14戦12勝2着2回。さらにはブリリアントカップ、大井記念と重賞2連勝を飾り、JpnⅠ・帝王賞へ挑戦。キングスソードに1秒3差5着に善戦した。今度は1600mが舞台だが、過去6勝2着2回。また父ダノンレジェンド、母父オレハマッテルゼ。距離短縮は望むところ。南部杯初の南関東所属馬優勝の期待がかかる。

アラジンバローズ

セン7歳 父ハーツクライ

新子雅司きゅう舎・園田

 中央ダート4勝・オープンから昨年9月、園田へトレード。3勝をマークしてマーキュリーカップへ参戦7着に終わったが、続いて佐賀・サマーチャンピオンへ遠征。8番人気ながら鮮やかなまくりを決めて初Jpn(Ⅲ)を手にした。7歳ながら、レースキャリアは園田在籍も含めて20戦。伸びしろは十分ある。

ミックファイア

牡4歳 父シニスターミニスター

渡邉和雄きゅう舎・大井

 デビュー戦から圧倒的な強さを誇り、無敗6連勝で南関東三冠を制覇。トーシンブリザード以来の無敗三冠馬となった。続くダービーグランプリも貫禄で制し、東京大賞典へ挑戦。古馬とは初対決で8着。以降もフェブラリーステークス7着、かしわ記念5着。古馬の壁に突き当たっているが、成長続ける4歳馬。南部杯で突破するか注目が集まる。

ダイシンピスケス

牡6歳 父マジェスティックウォリアー

森秀行きゅう舎・栗東

 デビュー5戦目の川崎条件交流で初勝利をあげ、2勝目を船橋でマーク。以降は2勝クラスにとどまっていたが、昨年12月から圧巻の3連勝。ついにオープン入りを果たし、7ヵ月休養明けの重賞初挑戦・白山大賞典(金沢)でも2着に粘った。メンバーはさらに強化されたが、本格化は疑いなし。