注目レース情報

第28回マーキュリーカップ(JpnIII)

盛岡競馬場 ダ 2000メートル2024/7/15(祝・月) 12R 18:15発走

レースについて

○歴史

 マーキュリーカップはOROパークが完成した翌年、1997年に創設された。当時、水沢初のダートグレード競走で話題を呼び、第2回はメイセイオペラが第1回覇者パリスナポレオン相手に7馬身差で圧勝。後に南部杯、フェブラリーステークス、帝王賞とG(Jpn)Ⅰを3勝する礎(いしずえ)的レースとなった。2017年からメイセイオペラ記念の副称が付記されたのは、以上の背景による。

 第4回から舞台は盛岡ダート2000mへ替わり、現在に至っているが、オースミジェットは第3回を水沢、第4回を盛岡で連覇。同一レースでは非常に珍しい連覇を果たした。ほかに2連覇を達成したのはミツバ(第21回、第22回)、そしてマスターフェンサー(第24回、第25回)。

 メイセイオペラのほかにマーキュリーC優勝後、G(Jpn)Ⅰを制したのは15回ゴルトブリッツ(帝王賞)、第21回、22回を連覇したミツバ(川崎記念)の2頭。また第19回は大井代表ユーロビートが圧勝。メイセイオペラ以来、史上2頭目の地方所属馬優勝の快挙を果たした。一方、岩手勢は2020年、ランガディアが3着、一昨年もヴァケーションが3着に善戦した。

昨年優勝馬 ウィルソンテソーロ

コースの特徴

○ダート2000m

 4コーナー奥のポケットからスタートして2度の坂越えを要求される過酷なコース。それだけに中途半端な逃げや先行馬は苦しい。逆に、そんなイメージのせいか実力馬が先行策を採ると他が競りかけてこず、そのまま押し切って圧勝してしまうケースも。昨年は3レースのみでいずれも重賞。勝ったのはいずれも1番人気、いずれも逃げ・先行決着だった。その昨年の勝ち馬は外枠だったが過去5年の結果では1枠を筆頭に内枠の勝利が多い。ただし2着・3着まで見れば外枠も遜色なく、内外での有利・不利はあまり気にしなくていいだろう。

盛岡競馬場コース図

データ分析

○平安S、アンタレスS、ブリリアントS出走組に注目

2023年
1着 ウィルソンテソーロ かきつばた記念①←名古屋城S⑤
2着 テリオスベル 平安S←ダイオライト記念②
3着 メイショウフンジン 三宮S←平安S
2022年
1着 バーデンヴァイラー アンタレスS⑮←総武S①
2着 テリオスベル スレイプニルS①←下総S①
3着 ヴァケーション みちのく大賞典③←シアンモア記念
2021年
1着 マスターフェンサー 平安S⑪←ダイオライト記念④
2着 パンクオブクラウズ スレイプニルS←ブリリアントS②
3着 ヒストリーメイカー アンタレスS②←マーチS②
2020年
1着 マスターフェンサー スレイプニルS②←ブリリアントS②
2着 デルマルーヴル フェブラリーS⑬←川崎記念③
3着 ランガディア みちのく大賞典①←シアンモア記念①
2019年
1着 グリム アンタレスS②←名古屋大賞典①
2着 ノーブルサターン アハルテケS③←ブリリアントS⑫
3着 テルペリオン スレイプニルS①←ブリリアントS⑧
2018年
1着 ミツバ 平安S④←アンタレスS②
2着 ヨシオ マリーンS④←大沼S②
3着 フェニックスマーク ブリリアントS①←アレキサンドライトS①
2017年
1着 ミツバ ブリリアントS①←アンタレスS⑪
2着 ピオネロ 平安S④←名古屋大賞典②
3着 クリノスターオー 平安S⑭←コリアC②
2016年
1着 ストロングサウザー 平安S⑨←ダイオライト記念⑥
2着 タイムズアロー 京成盃グランドM④←かしわ記念⑥
3着 マイネルバイカ ダイオライト記念⑤←佐賀記念④
2015年
1着 ユーロビート 帝王賞④←大井記念②
2着 ソリタリーキング 平安S←ブリリアントS②
3着 トウショウクリーク アンタレスS⑮←マーチS⑧
2014年
1着 ナイスミーチュー 平安S⑥←ダイオライト記念⑦
2着 クリソライト 大沼S⑪←ブリリアントS④
3着 シビルウォー 帝王賞⑤←ブリリアントS⑩

 まず目につくのは平安S出走組。同レースは2012年まで実施時期が1月だったが、2013年から5月へ移行。距離も京都ダート1800mから1900mへ延長(2022年、2021年は中京ダート1900mで実施)された。平安Sで上位確保ならベターだが、着順はあまり気にしなくていい。平安Sを使ってきたことが大事。2連覇を達成したマスターフェンサーも2021年は平安S11着から優勝した。

 スレイプニルS、ブリリアントS出走組の好走も目につく。またアンタレスS出走組も要チェック。アンタレスSから直行、または一つレースをはさんでもアンタレスSもマーキュリーCとの連動性は高い。岩手勢ならシアンモア記念、一條記念みちのく大賞典の岩手王道を歩んできたトップホースに注目。

○過去10年は西高東低だが…

過去10年の所属先(左から2023年→2014年)
1着 東・西・西・西・西・西・西・東・大・西
2着 東・東・西・東・西・西・西・船・西・西
3着 西・岩・西・岩・西・東・西・西・西・東
(2013年~2004年)
1着 西・東・西・西・西・西・東・西・東・西

*西=栗東所属 東=美浦 大=大井 船=船橋 岩=岩手

 過去10年の所属別優勝は栗東(西)7勝、美浦(東)2勝、大井1勝。一昨年まで6年連続で栗東所属馬が優勝し、2021年は1着から3着まで栗東所属馬が独占した。しかし、昨年は美浦所属馬が1、2フィニッシュ。また2004年から2013年は美浦所属馬3勝、栗東所属馬7勝。必ずしも劣勢ではない。

○過去10年はミスプロ系がリード

1着 2着 3着 単勝率 連対率 複勝率
1番人気 4回 1回 1回 40% 50% 60%
2番人気 3勝 1回 1回 30% 40% 50%
3番人気 0回 3回 3回 0% 30% 60%
4番人気 2回 3回 0回 20% 50% 50%
5番人気 0回 0回 2回 0% 0% 20%
6人気以下 1回 2回 3回

 1番人気の優勝は4回。昨年ウィルソンテソーロ、2020年マスターフェンサー、2019年グリム2017年ミツバが1番人気で優勝。また2010年のカネヒキリ、2011年ゴルトブリッツ、シビルウォー(今回は過去10年なのでデータ外)と3年連続で1番人気が優勝し、一見すると人気サイドで決着しているのように映る。

 しかし2014年から2016年までは大荒れ。2015年はユーロビート(6番人気)→ソリタリーキング(3番人気)→トウショウクリーク(5番人気)の順で入線し、3連単11万2860円。翌年もストロングサウザー(2番人気)→タイムズアロー(9番人気)→マイネルバイカ(5番人気)で3連単が17万9810円と2年連続で超万馬券。さらに一昨年、1着バーデンヴァイラー(2番人気)→2着テリオスベル(7番人気)→ヴァケーション(10番人気)と入り、3連単63万5880円のマーキュリーC史上最高配当が飛び出した。マーキュリーCは人気サイドで決着か、大荒れかの両極端なケースが考えられる。

○過去10年→過去5年の世代別上位馬に地殻変動あり

過去10年の世代別上位馬
1着 2着 3着
4歳 4回 3回 1回
5歳 3回 3回 3回
6歳 2回 2回 1回
7歳 1回 0回 3回
8歳 0回 2回 1回
9歳 0回 0回 1回

 過去10年は4~7歳馬が優勝。2、3着も同様だが、8歳馬が2着2回。3着は4歳から9歳までまんべんなく出ている。しかし、過去5年のデータになると様相がガラリと変わる。

過去5年の世代別上位馬
1着 2着 3着
4歳 4回 2回 0回
5歳 1回 2回 3回
6歳 0回 1回 1回
7歳 0回 0回 1回
8歳 0回 0回 0回
9歳 0回 0回 0回

 過去5年の優勝馬は5歳以下。5歳優勝は2021年、マスターフェンサーが2連覇を果たしたもの。昨年は1着ウィルソンテソーロ(4歳)、2着テリオスベル(6歳)、メイショウフンジン(5歳)。一昨年は1着バーデンヴァイラー(4歳)、2着テリオスベル(5歳)、3着ヴァケーション(5歳)。近5年に限ると上位馬の若さが顕著となっている。果たして6歳、そして7歳以上の巻き返しがあるか。

有力馬紹介

クラウンプライド

牡5歳 父リーチザクラウン(SS系)

新谷功一きゅう舎・栗東

 ダート3戦2勝からドバイ・UAEダービーへ遠征。2着に2馬身以上の差をつけて完勝し、ケンタッキーダービーにも挑戦(13着)した。帰国後、日本テレビ盃を2着にまとめ、JBCクラシック(盛岡)はテーオーケインズの2着、チャンピオンズカップはジュンライトボルトの2着。  翌年は中東で2戦を使われてサウジカップ5着、ドバイ・ワールドカップ5着。帰郷初戦の帝王賞でハナ差の僅差負け。惜しくもJpnⅠタイトルを手にできなかったが、コリアカップ(ソウル)を圧勝。海外2勝目を飾った。

 以降はチャンピオンズC11着、2度目のサウジカップ9着に終わり、かしわ記念12着だったが、1コーナーで前がカットされて躓くアクシデント。それが最後まで尾を引いた。最大ネックはその後遺症が残っているか否か。仮に影響がないとすれば、今回のメンバーでは断然の実績。GⅡ(UAEダービー)1勝で負担重量57キロだが、久々の勝利をモノにして復活の舞台としたい。

メイショウフンジン

牡6歳 父ホッコータルマエ(ミスプロ系)

西園正都きゅう舎・栗東

 デビュー3戦目を勝ち上がり、4歳6月の3勝クラスを快勝し、直後にマーキュリーカップへ挑戦。得意の逃げ戦法に出たが、テリオスベルが強引にまくられたのが致命傷。7着に沈んだ。その後も2勝をマークし、ダイオライト記念2着。マーキュリーC2度目の挑戦をしたが、またもやテリオスベルにペースを乱されて3着。

 以降、白山大賞典2着、佐賀記念3着。前々走はブリリアントステークスを快勝し、GⅢ・平安ステークスでも3着に健闘。その後はマーキュリーC1本に絞って調整を進めてきた。テーマはもちろんリベンジ。今回は“天敵”テリオスベルが繁殖したため不在。しかもノンタイトルだから今年も54キロで出走できるのは強味。3度目で大願成就なるか、注目が集まる。

テンカハル

牡6歳 父キングカメハメハ(ミスプロ系)

矢作芳人きゅう舎・栗東

 母ジンジャーパンチはアメリカGⅠ6勝、通算12勝の強豪牝馬。姉に重賞4勝、オークス2着ルージュバック。一つ上の兄にGⅠ・大阪杯を制したポタジェがいる超良血馬。

 芝で3勝をマークし、5歳2月からダート路線へ変更。日本テレビ盃2着、浦和記念(いずれもJpnⅡ)3着を確保したが、東京大賞典7着。休み明け後もブリリアントS9着、平安ステークス13着と精彩を欠き、マーキュリーCへ活路を求めてきた。

ビヨンドザファザー

牡5歳 父カーリン(ミスプロ系)

藤岡健一きゅう舎・栗東

 父カーリンは3歳時にブリーダーズカップ・クラシック、プリークネスステークスを制し、翌年にドバイワールドカップなども制し、2年連続でエクリプス賞年度代表馬に選ばれた歴史的名馬。そして母父は大種牡馬ガリレオ。血統はテンカハルと勝るとも劣らない。

 新潟ダート1800m・2歳新馬戦を快勝し、8戦目に2勝目をマーク。GⅢ・レパードステークスで4着を確保した。その後も2勝をあげてオープン入り。以降はオープンの壁が厚かったが、前回・アハルテケステークスで鮮やかな直線一気を決めて快勝。復活ムードで参戦するのが何よりも心強い。

ロードアヴニール

牡4歳 父ドゥラメンテ(ミスプロ系)

野中賢二きゅう舎・栗東

 叔父がロードカナロアの良血馬。デビュー戦の阪神芝1800m11着に敗れ、以降はダート路線へシフト。5戦4勝、目下3連勝中と昇竜の勢い。しかも3連勝とも1番人気に支持された。前走・中山3勝クラスでは終始インに包まれる苦しい競馬を強いられ、直線も周囲が壁となり出どころがなかったが、一瞬だけ空いた馬群をついて快勝。着差以上に強さが際立っていた。時折り出遅れ、レースも粗削りだが、破壊力抜群。今年1月以来の実戦だが、重賞初挑戦で制覇のシーンも十分。

アラジンバローズ

セン7歳 父ハーツクライ(SS系)

新子雅司きゅう舎・園田

 デビュー2戦目(京都ダート1800m)を快勝したが、脚部不安が発生して1年3ヵ月の長期休養。そのため出世は遅れたが、4歳8月に3勝クラスを卒業。以降もオープンで2着1回3着2回と堅実さを発揮し、昨年8月に園田へトレード。5戦3勝2着1回。前走7着に敗れたが、5ヵ月半ぶりの実戦に加えて太目も影響したか。管理するのはイグナイターで2年連続年度代表馬に選ばれた新子雅司調教師。ひと叩きされて一変するか。

ケイアイパープル

牡8歳 父パイロ(APインディ系)

小野望きゅう舎・門別

 ダートグレードの常連で鳴らし、JpnⅢ・佐賀記念、白山大賞典を優勝。2年前にマーキュリーカップへ参戦して1番人気4着。昨年は名古屋大賞典2着が最高は他は苦戦の連続で門別へ移籍。赤レンガ賞3着から参戦する。

スワーヴアラミス

牡9歳 父ハーツクライ(SS系)

田中淳司きゅう舎・門別

 5歳時にGⅢ・マーチステークス、6歳時にGⅢ・エルムステークス、7歳時にGⅡ・東海ステークスを制した遅咲き。一昨年10月、南関東へ移籍して未勝利ながら2着4回3着3回。今年5月に門別入りしてコスモバルク記念2着、赤レンガ賞5着。歴戦のキャリアを生かして上位進出をもくろむ。

ギガキング

牡6歳 父キングヘイロー(ノーザンダンサー系)

稲益貴弘きゅう舎・船橋

 2歳時に南部駒賞、3歳時にダービーグランプリを優勝し、重賞7勝。門別1勝の他は盛岡、船橋で通算13勝。まさにコース限定のスペシャリストといっても過言ではない。マーキュリーCに一昨年参戦して5着。適性を前面に、それ以上の着順を目指す。

ヒロシクン

セン5歳 父ドレフォン(ストームキャット系)

佐藤雅彦きゅう舎・水沢

 中央1勝クラスから今年5月に岩手入り。B1戦であっさり3連勝を飾り、一條記念みちのく大賞典へ挑戦。鮮やかな逃げ切りを決め、周囲をアッと言わせた。祖母は秋華賞を制し、ジャパンカップでシングスピールにハナ差惜敗したファビラスラフイン。相手は大幅に強化されたが、岩手では底を見せていない。