注目レース情報

第48回 一條記念みちのく大賞典(OP M1)

水沢競馬場 ダ 2000メートル2020/6/21(日) 11R 18:10発走

レースについて

○歴史

 今年で48回目を迎える岩手古馬の最高峰「一條記念みちのく大賞典」。優勝馬の名前は馬運車にも刻まれ、昨年の覇者ハドソンホーネット号も盛岡と水沢を行き来している。この伝統の一戦を制することが、岩手ホースマンが目指す最高の栄誉。

 一貫してダート2000mを舞台に行われ、歴代優勝馬はスリーパレード、テルノエイト、ボールドマックス、スイフトセイダイ、グレートホープ、トウケイニセイ、モリユウプリンス、メイセイオペラ(3連覇)、トニージェント、ナムラタイタンなど、岩手競馬史に残る強豪がずらり名前を連ねている。

 第1回(1973年)~第36回(2008年)まで旧盛岡(緑ヶ丘)、新盛岡(新庄)競馬場で実施され、第37回、第38回は水沢競馬場。2011年は東日本大震災の影響もあって盛岡へ戻ったが、第44回(2016年)以外は水沢2000mを舞台に雌雄を決してきた。

昨年優勝馬 ハドソンホーネット

コースの特徴

○ダート2000m

 2コーナー直後からスタートして先行争いは向こう正面一杯を使うが、流れは意外に落ち着きやすい。人気面から見ても過去5 年間では4番人気以下からの優勝がない、人気上位が強い条件。

 昨年設定された東北優駿が盛岡に移り、また唯一2000mの特別戦だったジューンカップが1600mに短縮されるため、現時点でこの距離を使用するのは一條記念みちのく大賞典と桐花賞の2 レースのみとなっている。それぞれシーズン前半・後半の古馬の総決算的なレースでもあり、人気上位馬が強い傾向は今年も変わりがないだろう。

水沢競馬場コース図

データ分析

両雄並び立たず

 みちのく大賞典は2001年から他地区交流、2005年から2010年まで地方競馬全国交流で実施され、2011年から地元同士の戦いとなった。そのためデータは2011年から過去9回の分析となります。

表1
 1着2着 3着 勝率 連対率 複勝率
1番人気 3回 0回 2回 30% 30% 70%
2番人気 2回 2回 1回 20% 30% 50%
3番人気 3回 2回 0回 30% 50% 50%
4番人気 1回 5回 6回      

以下

 過去9回で3番人気内の優勝は8回。4番人気以下の優勝は2013年コスモフィナンシェ(6番人気)の1度のみと一見して人気に応えているように映る。[表1]

 しかし1番人気=1着、2番人気=2着は一度もなし。最も人気どおりの結果となったのは2015年、1着コミュニティ(2番人気)、2着モズ(3番人気)、3着ケイジータイタン(1番人気)だけ。

 1番人気、2番人気の決着は交流の最終年2010年、1着マルヨフェニックス、2着キングスゾーンまでさかのぼらなければならないが、これは今回のデータ外。

 また2番人気=1着、1番人気=2着のケースもなく、みちのく大賞典は波乱の要素を十分含んでいる。それを裏付けているのが平均配当。

 単勝平均配当  467・7円
 馬連複平均配当 4535・5円
 馬連単平均配当 10393・2円
 3連複平均配当 18902・2円
 3連単平均配当 130372円

 2013年、1着コスモフィナンシェ(6番人気)、2着トーホクキング(7番人気)、トーホクアロー(10番人気)で決着した時の配当が
 単勝   1390円
 馬連複  13940円
 馬連単  35200円
 3連複  11万9670円
 3連単  83万560円
 この一戦が一気に平均配当を引き上げているとも解釈できるが、それを除いても好配当が多い。今年の人気順はほぼ想定できるが、データを覆すか、データどおりとなるか興味深い。

前走1着から優勝は8頭、2着から優勝は1頭

表2
2019年 ハドソンホーネット あすなろ賞1着
2018年 エンパイアペガサス初夏特別1着
2017年 エンパイアペガサス あすなろ賞1着
2016年ミラクルフラワー 初夏特別1着
2015年 コミュニティ あすなろ賞1着
2014年 ナムラタイタン シアンモア記念1着
2013年 コスモフィナンシェ あすなろ賞2着
2012年 トーホクキング A級1着
2011年 コアレスレーサー A級1着

 みちのく大賞典が波乱傾向と分析したのに相反し、前走1着馬の優勝が8頭、2着から1頭。過去のみちのく大賞典を調べてみて正直驚いた。[表2]

 結論から先に言うと、レース関係なしに好調馬が本番も勝っている。“ここ一番は格重視”がビッグレースのセオリーだが、やはり順調であることが一番。パドックでも状態をしっかりチェックしてほしい。

 トライアル・あすなろ賞1着から優勝はハドソンホーネット、エンパイアペガサス(17年)、コミュニティの3頭。

 また2着からの優勝はコスモフィナンシェ、トーホクキング。コアレスレーサーはあすなろ賞3着から優勝した。

 ただ、あすなろ賞は昨年までみちのく大賞典の1ヵ月前に実施していたが、今年は中1週(6月9日)なので直結するかどうか。昨年までとは違うと考えた方がいいかもしれない。

4、5歳馬が活躍

表3
  4歳 5歳 6歳 7歳 8歳 9歳以上
1着 3回4回 0回 1回 1回 0回
1着 1回 1回 1回 3回 3回 0回
1着2回 1回 3回 3回 0回 0回

 4歳馬の優勝はエンパイアペガサス(17年)、ミラクルフラワー、コスモフィナンシェの3頭。5歳馬はハドソンホーネット、エンパイアペガサス(18年)、コミュニティ、トーホクキングの4頭。岩手デビュー、もしくは下級条件から上り詰めたケースが多いのが特徴。[表3]

 他の世代で目につくのは7歳馬の活躍で、優勝1回2着3回3着3回と好走。実力ある7歳馬から目が離せない。

 6歳世代の優勝がないのが気になるかもしれないが、2010年のマルヨフェニックス(笠松)が優勝。それ以前にも6歳優勝馬(現在表記)が何頭かいる。

ミスプロ系か、ヘイルトゥリーズン系か

ハドソンホーネット(父ロージズインメイ ヘイロー系)
エンパイアペガサス(父エンパイアメーカー ミスプロ系)
ミラクルフラワー(父プリサイスエンド ミスプロ系)
コミュニティ(父ブライアンズタイム ロベルト系)
ナムラタイタン(父サウスヴィグラス ミスプロ系)
コスモフィナンシェ(父ゴールドアリュール SS系)
トーホクキング(父キングリファール ブラッシンググルーム系)
コアレスレーサー(父ダイタクリーヴァ SS系)
マルヨフェニックス(父エイシンサンディ SS系)

 今年の岩手二冠目・東北優駿(岩手ダービー)はフレッチャビアンカが優勝した。父がキンシャサノキセキだから、その父フジキセキ、その父サンデーサイレンス(SS)。

 人気を集めたグランコージー(父ベルシャザール)、マイランコントル(父トゥザグローリー)、ピアノマン(父ベルシャザール)はいずれもキングカメハメハ←キングマンボのミスプロ系の主流サイアーライン。

 2000mに舞台が替わってSS系がミスプロ系を打ち負かした一戦とも言えた。

 それはみちのく大賞典にも当てはまる。ミスプロ系は過去4度(エンパイアペガサスは2連覇)優勝し、一歩リードしているが、SS系も3度優勝。

 また昨年のハドソンホーネットはSS系ではないが、サンデーサイレンスの父がヘイロー、その父ヘイルトゥリーズン。

 コミュニティも含め、広義の意味ではヘイルトゥリーズン系が過去10年で5度も優勝している。

 今年、人気を集めるランガディア、エンパイアペガサス、ヤマショウブラックともミスプロ系。以上3頭の争いとなる可能性が高いが、果たしてヘイルトゥリーズン系が食い込むのか―注目に値する。

有力馬紹介

ランガディア

牡6歳

板垣吉則きゅう舎(水沢)

 転入初戦の赤松杯はパワーの要るダート対応が未知数のため、6番人気に甘んじたランガディアだったが、向こう正面から一気に加速すると4角先頭。衝撃は直線を向いてからだった。
 逃げるスティンライクビーをアッサリ交わすと、もう一段ギアアップ。後続をあっという間に突き放して9馬身差。まさに搭載エンジンの違いを見せつけた。
 父はキングカメハメハ。芝では怪物種牡馬ロードカナロア、日本ダービー馬ドゥラメンテ(二冠馬)、レイデオロなどを送り出し、ダートでもG/JpnⅠを10勝したホッコータルマエ、チュウワウィザードなど活躍馬が多数。
 さらに母マリーシャルダンはダイナカールを母に持ち、自身は中央ダート4勝。走る素地は十二分にあったが、転入直前の総武ステークス(中山ダート1800m)16着。初ダートで大敗を喫したのが低評価の理由だったが、あまりの強さに唖然とした。
 続くシアンモア記念は当然のように1番人気に支持されたが、赤松杯圧勝後、馬場入れを再開したのはレース2週間前。乗り込み不足が不安視された。
 位置取りは赤松杯より前の5番手をキープ。あとは3コーナー手前から徐々に先行グループに接近したが、その外にエンパイアペガサスが抜群の手応えで並びかけ、4コーナーから2頭のマッチレース。内で粘るランガディア、外エンパイアペガサスの叩き合いはゴールまで続き、ランガディアは最後まで抜かせずゴール。
 赤松杯では搭載エンジンの違い、そしてシアンモア記念では並ばれても抜かせない勝負根性を見せてくれた。
 今度は水沢2000mが舞台だが、東京芝2000mで1勝なら問題なし。
 あえて課題を科すとすればシアンモア記念が1600mで実施されて以降、一條記念みちのく大賞典を連勝したのは2014年、ナムラタイタンの1頭のみ。ランガディアは史上2頭目の偉業達成にチャレンジする。

エンパイアペガサス

牡7歳

佐藤祐司きゅう舎(水沢)

 重賞タイトルを制すること15回。3歳時に岩手二冠を制し、ダービーグランプリ2着。惜しくも三冠(当時)達成はならなかったが、準三冠は誇れる勲章。さらに南関東・報知グランプリカップ、笠松・オグリキャップ記念を優勝。そして一條記念みちのく大賞典2連覇。
 昨年はM1タイトルこそ手にできなかったが、青藍賞、白嶺賞と重賞2勝。4歳以上最優秀馬に選出された。
 以上の足跡が示すとおり勝って自身の価値をあげ、負けても相手の価値をあげるのが“帝王”たるゆえん。ここ4年間はエンパイアペガサスが岩手競馬の主役を演じ続けてきた。
 恒例だった冬期間の南関東移籍は今年せず、自きゅう舎で英気を養い、赤松杯から始動。桐花賞2着に屈した雪辱が最大テーマだった。
 ところがスタート直後につまづいて最後方からの競馬。これが致命傷となり、直線追い込んだが5着まで。昨年のオグリキャップ記念4着以来、久々に馬券対象から外れた。
 それでもシアンモア記念は2番人気。ファンは底力を信じ、それにエンパイアペガサスもこたえた。
 今度はスタートをスパっと決め、ランガディアの後ろを追走。徹底マークする戦法に出て、ランガディアが動いたのを見てスパート。3~4コーナーで馬体を外に併せた時はほぼ馬なり。逆にランガディアは手が動き、明らかにエンパイアペガサスの方が手ごたえ抜群。
 残念ながらランガディアを捕えることはできなかったが、わずかハナ差の接戦に持ち込み、帝王健在を誇示した。
 昨年の一條記念みちのく大賞典は本調子を欠き、3連覇はならなかったが、今年が仕切り直し。メイセイオペラ以来、史上2頭目の3度優勝を目指し、勇躍登場する。

ヤマショウブラック

牡4歳

小林俊彦きゅう舎(水沢)

 ファンブック2020の年度代表馬報告でこう記した。『鉄は叩かれて強い鋼(はがね)になる―』と。
 北海道2勝から交流・知床賞を制し、そのまま岩手入りしたが、寒菊賞2着後、南関東へ移籍。より高いステージを求め、南関東クラシック・羽田盃5着。東京ダービーは10着だったが、続く古馬B2級を快勝。強い相手と戦ってきた経験を糧に成長し続けていった。
 黒潮盃7着後、岩手へ再転入。まず不来方賞を驚異的な末脚で勝利をもぎ取り、続いてイーハトーブマイルも優勝し、ダービーグランプリは善戦及ばず4着。
 次のターゲットに白嶺賞を選び、惜しくもハナ差2着。エンパイアペガサスの壁は厚かったが、桐花賞で打倒。栄えある年度代表馬に選出された。
 冬休みも無事に過ごして赤松杯から始動。ランガディアの圧勝の前に屈し、逃げたスティンライクビーも捕え切れず3着。シアンモア記念も2頭から9馬身も離された3着に終わった。
 しかしヤマショウブラックは血統背景からも典型的なステイヤー。2000m延長は望むところだろう。
 今回、6頭立ての少頭数。これがどの馬に味方するか未知数だが、少なくとも馬群をさばく苦労はないはず。4歳の若さを前面に反撃をもくろむ。

パンプキンズ

牡4歳

伊藤和忍きゅう舎(水沢)

 2歳時、初重賞を制したのは寒菊賞だった。3番人気ながら見事な逃げ切りを決め、ヤマショウブラックの追撃を完封。いいムードで2歳シーズンを終え、ひと冬を越してさらにパワーアップ。
 東北優駿(岩手ダービー)、ダイヤモンドカップを制して堂々、二冠を達成。自慢のスピードが冴え渡った。
 続く不来方賞はヤマショウブラックの3着に敗れ、残念ながら三冠達成ならず。以降は歯車が狂ったかのように白星から遠ざかった。
 しかし、みちのく大賞典トライアル・あすなろ賞を8馬身差で逃げ切り、強いパンプキンズがついに復活。伊藤和忍調教師のコメント「これまでの道のりが長かった」に感動した。
 今度は岩手トップが相手だが、チャンスがない訳ではない。マイペースで逃げたら強じんな粘りを発揮するのがパンプキンズ。有力3頭がけん制し合えば漁夫の利を得る可能性も十分ある。自分を信じ、自分の競馬に徹し、正攻法で伝統の一戦へ挑むに違いない。